この度、金沢で第19回日本疫学会学術総会を開催する運びとなりました。私が公衆衛生を志して以来、疫学は社会に苦しみをもたらす公衆衛生上の諸問題を記述・説明し、予防することに有効な手段、公衆衛生学の方法として重要なことに変わりはありません。その疫学を志す者たちが研究成果を分かち合い、交流を深める場である、日本疫学会学術総会を主催させていただくことは、何物にも変えがたい幸せでもあると考えております。
今回は「疫学研究から健康施策へ」をテーマとして、得られたエビデンスを机上の学とせず、健康施策に生かすことを目的とした疫学研究の実現の一助となるような、特別講演やシンポジウムを企画しております。
いうまでもありませんが、疫学研究は19世紀のJohnSnowのコレラ流行の解明、日本では高木兼寛の脚気の原因と食事改善による対策の実施などから始まり、多くの人々を死から守った実践的な学問であります。健康問題は社会の変化に伴い、環境問題や生活習慣病など、多種多様となっておりますが、疫学研究は一貫として、その有効な対策樹立に有効な科学であることには変わりありません。さらに近年では、危険要因や原因究明だけでなく、治療の有効性や個人のリスク評価など、臨床医学にも直接寄与する応用的な研究も行われるようになって来ました。
世界の人々の交流が盛んになり、健康問題も地球規模で流行し、その対策も国境を越えて行う時代に入ってきております。感染症だけでなく、環境問題や食物、エネルギー問題など、先進国、途上国を問わず、健康影響が危惧され、疫学的研究による対策の決定が必要とされています。私たちは、分野を越えて、世界の研究者と協力して疫学研究を実践していくだけの、見識と技量を身につけなければなりません。
第19回日本疫学会学術総会では、健康施策を地球規模の人々を対象に、また、集団だけでなく、個人の健康にも寄与できる疫学研究を考える場を提供できれば幸いと存じます。 |