■ βラクタマーゼ試験 (ニトロセフィン法) の試験対象菌種 | |
【質問】
いつも丁寧な回答, ありがとうございます。ちょっと混乱していますので, 教えていただきたいのですが。 今回の回答では, 「本来, 日常検査においてβ-ラクタマーゼ検査が有用な細菌について行うべきで, 腸内細菌や緑膿菌などは原則, 対象外になります[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/beta-lact2.html]」とありますが, 以前の“β-ラクタマーゼの検査方法を教えて下さい[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/beta_lact.html]”では, 「一般的にβ-ラクタマーゼ試験が必要な菌種としては, Staphylococcus属, Haemophilus 属, Enterococcus faecalis, Neisseria gonorrhoeae, Moraxella catarrhalis, Prevotella属, Porphyromonas属などがあげられます。EnterobacteriaceaeやPseudomonas aeruginosaでは感受性検査の成績と一致しない場合がみられることから通常はβ-ラクタマーゼ試験を実施していませんでしたが, 先に述べたESBLの出現によりEscherichia coliやKlebsiella pneumoniaeを中心に検査することが求められています」とあります。できましたら, “ニトロセフィン法でβ-ラクタマーゼ検査をした方がいい菌種とその結果の判断について注意すべき点”がありましたら, もう一度まとめていただければ大変助かるのですが・・・いつもあつかましいお願いで恐縮なのですが。 【回答】
βラクタマーゼ陽性株: Staphylococcus aureus ATCC 29213 βラクタマーゼ陰性株: Haemophilus influenzae ATCC 10211 5分以内に判定し, 赤変したものを「陽性」, 黄色のまま変化しないものを「陰性」とします。ただしHaemophilus 属, N. gonorrhoae, M. catarrhalisについては1分以内, またはStaphylococcus属では1時間まで反応を観察することが大切です。 (愛媛大学 宮本仁志)
【回答への補足】
βラクタマーゼ試験は, 実際の日常検査で薬剤感受性試験に先立ち, 迅速試験として実施する場合と, 菌株の薬剤耐性機序を正確に同定する場合のふたつの目的で実施されます。前者の場合には, βラクタマーゼ (ペニシリン分解酵素) の有無がペニシリン系薬剤の適応可否を予測でき, しかもほぼ瞬時に判定できることから, 実際に行われる化学療法の効果を予見できるという背景があります。この目的での試験対象株がHaemophilus属, Neisseria gonorrhoeaeです。後者の場合は, 例えばあるE. coli の菌株がESBLであることを同定するため, その菌株にペニシリンを使えるか否かの決定ではなく, ESBLの性状のひとつとしてβラクタマーゼ産生を確認する必要があるので, 通常の検査では試験対象菌種ではないE.coliについてもβラクタマーゼ試験を行うことになります。 (琉球大学・山根 誠久)
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