日本のカドミウム汚染地域と地域住民の健康障害


 カドミウムは腎障害を引き起こすことがよく知られていますが、腎炎などの様な糸球体障害ではなく、尿細管障害であることが大きな特徴です。
もっとも進行した腎障害では糸球体機能も障害され、腎不全になる場合もありますが、病理検査でも腎炎のような糸球体の病変は認められません(詳しくはイタイイタイ病の項を参照下さい)。

 各地の汚染地域住民では多数の腎障害を持った人々が認められますが、腎障害の有無は尿中にβ2ーマイクログロブリン(β2ーMG)という普通の蛋白尿に出ているのより分子量の小さい蛋白(低分子蛋白)が1000μg/gCr以上出ているかどうかで判断します。
典型的な腎障害ではβ2ーMGだけでなく、糖や蛋白、アミノ酸なども尿中に過剰に排泄されており、リン再吸収率が低く、代謝性アシドーシスも認められますが、軽度なものではβ2ーMGだけがでている場合もあるからです。

 下の図は日本の主なカドミウム汚染地域の場所とそこに住み健康影響の及んでいる可能性のある住民の数、汚染の程度を示す尿中カドミウム陽性(10μg/Cr以上)者率、尿蛋白・尿糖同時陽性者率を示しています。尿中β2ーMG陽性率の方がよいですが、全国的なデータがないので、代わりに尿細管障害の指標として尿蛋白、尿糖同時陽性率を示しました。
イタイイタイ病の発見された富山県神通川流域が最大規模の汚染地域であることが理解いただけると思います。






   

国際シンポジウムイタイイタイ病

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