05/09/08
05/09/09
■ 過酢酸耐性かび, Chaetomiumとは・・・
【質問】
 清涼飲料の品質管理をしているものです。コーヒーやブレンド茶の汚染指標菌として“Chaetomium”があげられているようですが, (1) 耐熱性, (2) 塩素などの耐薬品性, (3) 生育pHなどのデータがまったくわからなく, どのような状況での汚染なのかと言う情報も知りません。情報がありましたら教えていただきたいと思いメールいたしました。私が調べた情報としては:

(1) ケマタカビと言われる中温性, 好湿性の子のう菌
(2) セルロース分解能が強い
(3) 繊維質分解能が強く, 劣化を起こす
(4) マイコトキシンとしてケケトグトボシンA, Bを生産する。

ということくらいで, 危害はありそうな“カビ”だというくらいです。よろしくお願いします。

【回答】
 Chaetomium funicola M002の耐熱性は, D値で過酢酸濃度500μg/mlの時, 39℃で2.67分, 48℃で1.03分という報告(文献 3)があります。塩素のデータは見つかりませんでした。生育pHに関してはChaetomium globosumが酢酸でpH 4以下にすると発育しないこと(文献 6)が示されています。一般論について, かび検査マニュアルカラ_図譜 (監修: 高鳥浩介, (株) テクノシステム) から抜粋しますと,「Chaetomium globosum(ケタマカビ)は世界各地に分布(土壌, 植物, 穀類, 繊維, 紙, 木材, 皮革, 飼料)する。セルロ_ス寒天培地やポテト・キャロット寒天培地で20_30℃, 10_14日培養する。相対湿度90%以下で発育しない。70%アルコ_ルで2分間以上, 35%アルコ_ルで5分以上作用させると発育しない。酸化電位水 (残留塩素濃度10_12μg/ml, pH 2.4) で120分作用させても死滅しない(文献 1)。防かび剤のチアベンダゾ_ルのMIC値は1_10μg/ml。紫外線照射量200mW・sec/平方cmで死滅率99.9%。」また, 社団法人 全国清涼飲料工業会 (略称: 全清飲) に問い合わせたところ, 無菌充填している会社が問題にしているだけで, 全清飲では汚染指標菌としていないとのことでした (〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3丁目3番3号CMビル3階), 電話番号 03-3270-7300 (代表), FAX番号 03-3270-7306)。

〔参考文献〕
1.黄吉城ら: 酸化電位水の殺真菌効果. J. Antibact. Antifung. Agents, 25 (7): 387〜391, 1997.
2. Serena, C.,et.al: In vitro activities of new antifungal agents against Chaetomium spp. and inoculum standardization. Antimicrob. Agents and Chemother, 47(10): 3161〜3164, 2003.
3. Sato, J. and K. Takei: Fungicidal effect of peracetic acid preparation on Arthrinium sacchari and Chaetomium funicola isolated from a tea beverage manufacturing plant. Biocontrol Science, 5(2): 121〜126, 2000.
4. 高鳥浩介ら: 食品工場を汚染するカビ1. 製パン・製菓工場のカビ汚染について. J. Antibact. Antifung. Agents, 7(10): 1〜8, 1979.
5. 堤将和ら: 過酢酸の殺菌作用 (第2報) 核酸 (DNA) ならびに核酸塩基に対する過酢酸の作用. 食衛誌15(2): 116〜120, 1974.
6. 諸角聖. 食品製造におけるカビ汚染防止対策. J. Antibact. Antifung. Agents, 25 (6): 355〜361, 1997.

また, この「質問箱」にある下記の項目も参考にしてください。
http://www.jarmam.gr.jp/situmon/tainetu_kabi.html
http://www.jarmam.gr.jp/situmon/chaetomium.html
http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/mineral-water.html

(日水製薬・小高秀正)


【質問者からのお礼】
 ありがとうございます。大変参考になりました。耐熱性かびなどのデータの中では取り上げられていないので, おそらく耐熱性はないだろうと思ってはいたのですが, 問題となった理由の情報が乏しかったので疑問に思っていたところです。おそらく原料の汚染か, PETなどの冷却水の吸い込み現象というような問題がターゲットになると思いますのでそういう方向性で特性を理解すればよいだろうと思いました。


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